「その人のチャームポイントは、表情や会話からキャッチ!」
The Day Spa (以下TDS):美容誌での連載、いつも楽しみに拝見しております!どうしたらその人の1番のチャームポイントを発見してより際立たせるメイクができるのでしょうか? 「自分の顔ですらよくわからない!」という私たちにもできる、チャームポイントの見つけ方や見極めるコツなどをぜひ教えてください。
西山さん(以下敬称略):先ほど、人の肌に触れる職業、というお話の中で、“人間観察”というお話をさせていただきましたが、その人の考え方や生き様などは、その人の肌や目の使い方、笑い方など、そういう表のものに現れると思うんです。いわゆる“人相学”でしょうか?
長年この仕事をやっていると一種の勘のようなものが働いて、「あっこの人、ちょっと苦労されてきたのかな?」
「のびのびと育ってきたんだろうな!」、なんてことがなんとなくわかるようになるんですが・・・
その勘も働かせつつ、具体的な見極め方としては、メイクをさせていただく際、とにかく私はしつこいくらいお話をするんですね。もう質問攻めにしてしまうくらい。(笑)
「食べ物だと何が好き?」、なんて本当にたわいもないようなことから、「どんな男性がタイプなの?」とかね。
そうやってフレンドリーに話しかけた時、例えば、自分のことはさておき相手に対して、「男性はとにかくかっこよくないとイヤ!」というように、相手への要求ばかりをする。 または、「私なんてまだまだだから、容姿なんて関係ないです」というように、話し方ひとつとっても、そこにその人となりが見える。
控え目で透明感がある方だな、と感じたら、なるべく肌に透明感を持たせてナチュラルなメイクにして差し上げたり、または前者の方のような、自分の主張を前に出したい方なのかな?と感じた時には、アイメイクを強めにしてみたり・・・
もう1つは、その方の生きざま、持っているオーラ、イメージから複合的にキャッチする方向性。
まずはその方に対して感じたオーラをベースに、さらに直接話をしていくと、「こうなりたい!」というイメージがなんとなく言葉に現れるので、そこをすかさずキャッチしメイクにつなげていくんです。
具体的に例をあげてみると・・・
笑った時に「とても笑顔が素敵だな!」、と思ったら、「ちょっとリップにポイントをもってきてあげようかな?」とか、「チークの位置はもっと高めに入れてあげる方が、笑った時により一層キュッと引きあがった感じになるかな?」。
「なんて目元が素敵なかわいらしい方なんだろう」、と思ったら、「まつ毛をたっぷり塗ってあげてさらに目力を出してあげて、人の視線が目元に行くようにしてあげるとよりチャーミングに見えるかな?」。
とてもナチュラルな方であれば、マユをあまり頑張ってかかない方がこの人らしいな、とか、ヘアスタイルは無造作な方がいいな、とか、とってもきっちりしている方だったら、セット感をしっかり出してあげた方がその方らしいな、とか・・・
とにかくいろいろなことを複合的に判断して、どんどんと手が動いていく、という感じなんです!
コミュニケーションをとりながら、その人の空気感をふってあげる、っていえば良いのかな?
じ~っとしていてもその人の空気感はあまり出てこないので、ちょっとバカなことを言って笑わせて茶目っ気のある表情を引き出したりして、その人が持っている自然な表情を引き出すんです。そうすると、「なるほど、こういう表情をするのね!驚いた時は右眉がすごくあがるのね。」などと言うように、その方の表情ぐせが分かるんですね。だからメイクはその表情の作り方を見越して、眉を意識して、正対するように書いてさしあげよう、とかね。
すごくエラを気にされているから、できるだけ目立たないようなメイクをして差し上げよう、ヘアでちょっと隠してあげよう・・・
「きっとこの人、本当は唇がうすいのをすごく気にしているな」などというように、チャームポイントとマイナスポイント、両方のポイントもだんだんと見えてくる。それを踏まえてメイクをさせていただいていますね。
「人から褒められてこそ気づくチャームポイントもある!」
TDS:そうなんですね。私も今すぐに、西山さんにぜひメイクをしていただきたくなってしまいました!
では自分自身でチャームポイントを見つけるコツみたいなものはあるのでしょうか?私自身、どこをチャームポイントにすればキレイになれるのかわからないのですが・・・
西山:「チャームポイントがわからない!」
そうですよね? 皆さん、よくそうおっしゃっていますね!(笑)
今の世の中の人たち、特に男性が女性をほめなくなったかな? そう思いませんか?
やっぱり、何より人から褒められることによって、自分のチャームポイントを自分自身でも気づけると思うんですね。会う人会う人から、「目がキレイですね!」「とても目が大きくてかわいいですね!」と褒められたら、「あっ、私って目が大きくてかわいいんだ!」って簡単に気づくことができますよね? 「あなたの肌って本当にキレイね!」って言われたら、「あっ、私のチャームポイントはキレイな肌かも?」って。それは自信となって、「あなたのチャームポイントはどこですか?」と聞かれたら、「たぶん目かな?」と言えるようになる。
ひとつでもどこかに自信を持てたら、それは前向きになれる一歩!
だからできるだけ私は、その方に会った時、1番特徴的な素敵なポイントを褒めるようにしているんですよ!褒められればさらに、もっと自分を磨こう!と思えるし、もっとかわいくなれるようアイメイクを頑張ってみたりする・・・
褒められてイヤな気分になる人なんて誰もいないので、「みんな、もっと褒めよう!」って言いたいですね。
(実はこの時実際に、インタビュアーの私についても、西山さんはインタビュー中いろいろと褒めてくださっていました。とっても自然に、でも本当に自信につながる言葉をいただき・・・。“チャームポイント”を聞かれたら、これからははっきりと答えられそうです!)
「”キレイ”は、人への思いやりや気遣いなどがあってこそ、その人のオーラとなって現れるもの。」
TDS:西山さんの著書「美容脳~あなたがキレイになれない理由」を拝見いたしました。西山さんの美容哲学~その考え方だと美しくなれないと気付いて~というコメントには本当にドキッとさせられたのですが、西山さんが思う、本当に“美しい女性”とは?“女性の理想像”や西山さんご自身が目指されている女性像がありましたらぜひ教えてください。
西山:先程もお話させていただいたように、本当に“人生は学び”と常日頃思っているのですが・・・
相手に対する思いやりや気遣い、というものが、その人のオーラとして、印象として現れるものだと思っているんです。それは実際のしぐさだったり、ご自身がされるヘアやメイクだったり、言葉づかいだったり、本当に全てのことに現れると思っています。
だから例えば、「雑誌を見てその通りにメイクをしてみたんだけどかわいくなれない」、とか、「人からも全然褒められない」、なんて言うかもしれませんが、それは当たり前!
たった1つの方法論を実践したところで、本当の意味でのかわいらしさ、美しさには結びつかないと思うんです。しぐさや言葉使い、相手に対する思いやり、というようないろいろな要素が複合的に備わってこそ初めて、美しい人、キレイな人、と人からも思ってもらえる。
とってもキレイなメイクができたとしても、だらけた態度で乱暴な言葉使いをしていたとしたら、それは単にメイクがそこそこキレイなだけであって、その人自身がキレイなわけではない、と。
たたずまいや気遣いが現れる言葉使い、そして相手を尊重する気持ちが全身のオーラから感じられると、「なんて美しい人なんだろう!」「この人、心も絶対キレイなんだわ!」と私は思えるんです。だから大人になっても言葉使いがガサツだったりすると、いくらメイクをキレイにされていたとしても、美しい人とは思えないですね。だからこそ、私も気をつけよう!と思っています。
私がいつも、「こんな女性でいたい!」って思っている方、お名前を出させていただくと・・・
それは皆さんもご存知 美容ジャーナリストの齋藤薫さん。彼女はとっても聡明・知的でありながら、いつも腰が低くてお話の仕方も丁寧で、そして吸い込まれるような素敵な目をしていらっしゃるんです。長い間、それこそ二十何年かわいがっていただいているのですが、本当にずっと同じイメージの方、全くイメージがぶれないんです。頭もよくて文才があって、もちろん姿も美しい方で、言葉づかいもしぐさも丁寧で、人を常に尊重される気遣いもお持ちの方。まさに、こういう女性を目指したい!と思わせてくれる方ですね。身近にこのような素敵な方、目標とする方がいらっしゃると、自分自身常にハッとさせられますね。「私はまだまだだわ」って。
いろいろなジャンルに目を配って常に勉強していらっしゃいますし、本当にいつも尊敬している素敵な女性です。
あと忘れてならない女性、それは「オードリー・ヘップバーン」。彼女は、生き方がずっとぶれていない!そこが大好きなんです。
モデルから女優になられて、有名な「ローマの休日」の主役に大抜擢されて、大成功された本当に大女優さんですよね?にもかかわらず、常に「普通」であることを願っていらっしゃった女性だったのでは?と思うんです。もちろん、それが事実がどうかわかりませんが、私が彼女のことを、本や資料で拝見した中で感じたことなんですね。
「普通のことを普通にして生きていきたい」
とてもノーマルな精神を持ち合わせた女性なんだなと・・・
そして晩年は、ものすごくボランティア活動に励まれて、本当に一生懸命力を注がれ、世界中の飢餓で苦しむ子供たちや貧しくて骨と皮だけの子供たちのところへ、自らが足を運んで多くのボランティア活動をされた・・・
生き方全てが美しい!正しい美しさって、ココにあった!、とそう彼女を見て思ったんです。
もう尊敬を通り越して崇拝しているほどですね。
「1日1回、夜寝る前のメディテーション。心身共にデトックスされる大切な時間です。」
TDS:現在の女性はみなさんとても忙しく、自分を見失っていることも多いのでは?と思うのですが、そのような女性にアドバイスされるとしたら??
西山:そうですね・・・私も通わせていただいているのですが、“スパ”というのは、日常を離れて異空間に行ける場所だと思うんです。静寂の中、豊かな香りを取り込んで精神統一する、私は1番身近にできるメディテーションスペースだと思っています。
日常生活の中でメディテーションすることはなかなか難しいですよね?
自宅や事務所、いわゆる日常の中では、本当にすごい気合いを入れない限りできない。
でも“スパ”は、あの空間に身を置いた瞬間からすぐに、俯瞰から自分を見直せる空間へあっという間にシフトできる。セラピストがリンパの流れを促したり身体を癒してくれて、それこそまさに天使のようなセラピストに身をゆだねて、薄暗い室内でいい香りに包まれながら、その空間の中にいることによって自分というものを再確認できる・・・
「とてもハードに、バタバタ働いていたけど、人を傷つけてはいないかな?」「人に対しての言葉や言動、顔つきは大丈夫だったかな?キリキリしていなかったかな?」、そういうことを自分自身に問いただすことができる。そうして、「あ~いけない!そういえばちょっと顔がきつかったかも?あの言い方よくなかったかも?」と改めて自分自身に問いただし反省し、そして浄化に入っていく・・・自分自身を見つめ直すことによって、無になっていくんです。
スパではこうして無の境地に入っていける、これは本当にすばらしいデトックスですよね。心身共にデトックスされる!スパは、そういう意味ではあえて遠くに行かなくても、無理やりそういう場をつくらなくても、そこに身を置くだけで自分自身と向き合える場所だと・・・。
人間って、たまには、脳みそを空っぽ、無の境地に置かなくてはダメだと私は思っているんです。
そんな風に思っているので、私は1日1回、そういう無になれるメディテーションの時間を作っているんですよ。それが夜寝る前の時間。
私は無宗教ですが、宇宙のエネルギーというものは信じているんですね。なんとなく何か漠然としたもの、人によってそれは神様なのかもしれないしいろいろあるとは思うのですが、私は宇宙のエネルギーみたいなものを想像しながら、「今日も1日ありがとうございました!」と感謝の気持ちを述べて反省をするんです。そして最後、自分だけではなくみんなが平和で楽しく、必ず“みんな”が笑っていることをイメージして、「みんなが幸せになりますように・・・」と。
それから目を閉じて、ふぅ~っと深呼吸、インナーマッスルを意識して深く腹式呼吸、だんだんとインナーマッスルがふにゃ~って
力が抜けていくのをイメージする。何回かこの深い呼吸を繰り返すうちに、物事がだんだんと何も考えられなくなっていくんですね。
「あっ、今何も考えていないな」って思ったら、その時はもう寝ています!すぅ~っと意識がなくなって深い眠りについていますね。
それを1日1回夜にやっているんですよ。実は小学校5年生からやっていて、1日も欠かしたことないんですよ!
その時から、家族のことを祈って、家族みんなが幸せでありますように・・・・って手を合わせていましたね。
「たまのお休みには、スパや温泉でリフレッシュ!」
TDS:西山さんのストレス解消法、癒しとは? 休日の過ごし方や今何かハマっていることなどあればぜひ教えてください。
西山:休日は、日帰り温泉やジム、スパ(「SUNDÃRI」のスパにも行かせていただいているのですが)に行ったりしてリフレッシュしていますね。
身体を動かすことは好きですし、映画館や美術館にもよく行きますよ。ゴルフ付き温泉にも行きますし、実は私、京都が大好きなんです!昨年は初めて、1度も京都に行けませんでした。それまではそれこそ何十年も、年に1~2回は、必ず京都に行っていたのに・・・
京都という場所は、私にとっては“メディテーション”の場でもあるんです。必ず伺うお寺もいくつかありますし、静寂の中に凛とした空気感、それがとても好きですね。そして旬の食材をいただけてお水も美味しいし、四季折々がとても美しくて、本当に魅力的な土地なのでたびたび出かけてしまいます。
そして私の“癒し”と言えば、やはりネコかしら? 17歳になってしまったので、もうおばあちゃん。生まれて3か月位で家に来たので、本当にもう17年、変わらずずっと一緒にいます。
ネコって、こう触っているだけでオキシトシン(別名“幸せホルモン”と言われていますよね?)がたくさん分泌するそうなんです。オキシトシンは、勝手に「あ~幸せ!」って自身を思わせてくれるそうなんです。だから私もネコを触っているだけで、その日イヤなことがあったとしてもすっきりと頭を切り替えられる・・・本当に“癒し”の存在!
どんなに疲れていても、その疲れを取り除いてくれる、何があっても癒してくれる。
本当に私にとってありがたい存在です。
TDS:最後になりますが、ぜひこれを読んでいる方々に向けてメッセージをいただけますか?
西山:「悩みは学びの一歩」
私は、マイナスにするのもプラスにするのも、全て考え方次第!それで次の一歩が変わる!といつも思っています。
そして・・・
「笑顔をつくりだすのは、今を楽しめるかどうか」
「笑顔でさえいれば、何があっても乗り越えられる!」
生きていく、ということは、本来本当に大変なことだと思うんですね。本当につらいこともたくさんあるし、苦しいし、あがくし、泣きたくもなるし・・・。でも時折訪れる幸福なことが自分自身を勇気づけてくれて、
「もっとがんばろう!」って思える。笑顔になってさえいれば、その幸せな笑顔の感覚が記憶形状され、この笑顔があれば大丈夫、乗り切れる!って思える、自信がつく、そういう風に思っています。
西山舞さん プロフィール
LUGAR主宰、ヘア&メイクアップアーティスト。サロンワーク、メイクアップスクールの講師を経て、「LUGAR」を設立。
現在ヘア&メイクアップアーティストとして、多数の広告や雑誌などの撮影を中心に活動している。
また著書には、「美容脳 あなたがキレイになれない理由」や「西山舞のメイクレッスン」「上品かわいい基本のメイク」などがある。